愛染堂市
 
車が横を通る度に乾いた赤土がパウダーみたいに舞い上がる。

観光客を呼び寄せようと、建設したホテルやバーなどの建物が紛争で頓挫している。

そんな造りかけの街並みが砂塵で霞む。

アタシは一瞬生まれ育った日本の街並みを思い出す。

母とアタシを肩車する父と、かつて炭鉱で栄えていた名残を残す寂しげな街並みを歩いた記憶が、鮮明にアタシの視界に広がる。

一瞬ここが何処なのか分からなくなり、アドルの事すら忘れてしまいそうになる。

そんなアタシを恫喝するように、大きな幌の付いたトラックがアタシの横をクラクションをならしながら通り過ぎる。

そしてアタシはアフリカの大地に連れ戻される。

< 104 / 229 >

この作品をシェア

pagetop