愛染堂市
通り過ぎようとするトラックの幌の中に、身を潜めてはいるけど数人の人影が見えた。
そして抱きかかえるように持たれた黒光りする影も『――銃だ』間違いない。
より一層の胸騒ぎがアタシを掻き立てる。
――早く子供達を連れ出さないと
あのトラックはおそらく革命軍のトラックでは無い。
この街は下手をすると数分後には銃撃戦になっているかもしれない。
『アドルゥーーッ』
暑さで奪われそうになる気力を振り絞って、アタシはアドルの名を呼びながら必死に街中を走る。
汗の滲む額に砂塵がへばり付くのを振り払いながら。