愛染堂市
―――――傭兵



 「アドルゥッ!!」


 通りの方からの叫び声に、俺は迂闊にも臆病者のように体を強ばらせ振り向く。

俺を此処へ引っ張って来た薄汚いガキも、俺と同じように目を丸くしながら通りに顔を向ける。


――中国人?否、日本人か?


『知り合いか?』


俺は英語が通じる筈も無いのに、通りから酷い形相でコチラに向かってくる女を指差し、ガキに聞く。

ガキは俺の方を向き直し、先程までのハシャぎようが嘘のように消え失せた表情で「キョーコ」とボソリと吐き捨てた。


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