愛染堂市
 
「そうなんですよ中島さん!!確かにFBIの資料通りなら、ここ数年の間は奴に不穏な動きは無いかもしれませんけど・・・」


小池が俺の一言を聞いて、嬉々として話し出す。

俺は懐かしさに浸った自分を恨んだ。


「準備銀行・・・それに国防総省にも侵入した男ですよ!!」


小池は俺の後悔を余所に、尚も関が切れたように話し続ける。


「・・・FBIの監視下にあって、今回の入国を認識していなかったと言うのは明らかにお粗末!!」


確かに、一塊のハッカーがFBIの監視の目を欺いて、国外へ出れるとはとても思えない。

必ず何者かとの接触が確認されていても良いはずだ。

左翼団体の内偵の中に奴の名を見つけたのは、奴の入国が確認される5日前。

当日の内にFBIと連絡を取り、奴の所在を確認したが、既に奴はアメリカを出ていた。

監視下に置いている人間をみすみす見逃す程、FBIが間抜けとは思えない。


「・・・それに中島さん」


小池は息つく間も無く話し続ける。

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