愛染堂市
 
「奴が表向きはリベラル派と言ってる、暴力団傘下の団体の手引きで入国してると言うのに、FBIの見解は、ここ数年目立つ動きが見受けられず”警戒”ですよ。身柄拘束後に即時引き渡しの要求も出ていますし・・・」


『なんだ?その即時引き渡しってのは?!』


「っもう・・・中島さん、また指示書読んでないでしょう?!」


小池の疑念に苛立ちも混ざり始め、少々口調が穏やかじゃなくなってきた。


『・・・まあ、アチラさんにはアチラさんの意図が有るんじゃねぇか?』


俺は少し落ち着き払い、小池をなだめるように言葉を掛ける。


「奴が何しに日本に来たのかは結局判らず終いですよ・・・」


『別に珍しい事じゃねえだろ?』


外国人犯罪者を内々に処理して、俺達が蚊帳の外になる事は別に珍しい事じゃない。


「中島さん、俺は今回の件は違うような気がします」


『どう違うって言うんだよ?』
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