愛染堂市
「今回の密出国に対する対応の鈍さは、不気味です・・・」
『・・・考え過ぎなんじゃねぇか?・・・現に、コチラの要求に対して奴の資料を速やかに提出して来てる訳だろ?』
小池の膝の上に置いてあったファイルを、人差し指で軽くコツきながら小池をやんわりと諭す。
「この資料も何処まで信じれば良いのやら・・・」
小池は一度ファイルに目を落とし、すぐに顔を上げ、前方を見据えるようにボソリと呟く。
『まっ・・・アレだよ。直接的に被害が出なかったにしても、国内の重要拠点にハッキングしたとなると、それなりに罪が重くなっても然りだけどな・・・』
「・・・中島さん」
『お前の疑問も確かに分かる。奴の処分は軽すぎる感じは否めんわな・・・それに監視期間中にもあまりにも空白が多く信憑性に欠ける』
「・・・じゃあ中島さんも?」
小池が期待するような目でコチラに顔を向ける。
フィルター近くまで火が近付き、唇に熱を感じ始めた煙草を灰皿に押し付けるように消す。
『・・・つまり司法取引だろ。・・・奴は監視下にあったんじゃ無い。FBIの傘下に居た、もしくはFBIの利用下にあったと考える方が当然だろう』