愛染堂市
この位の運動で息が上がる訳じゃないが、落ち着く為に呼吸を整える。
鼻息ですら向こう側の非常口裏に居る小池に聞こえてしまいそうな程、ビルの中はヒッソリとしている。
カチャリと音がして、小池を確認する為に角から僅かに顔を出し覗き込む。
『・・くそっ』
開いたのは非常口じゃない、奴らの部屋のドアだった。
目的のアメリカ人と、奴を此処へ連れて来た男と運転手だ。
小池が確認もせずに非常口を開けたら、奴らと鉢合わせだ。
馬鹿な小池が解錠の喜びで勢いよく扉を開けない事を祈りながら、俺は身を潜める。
奴らの足音がコチラ側に近付く、後二秒としない内に俺の真横に来るだろう。
俺は小池が来るのを待たず、その瞬間を狙う。