愛染堂市
「カチッ」と聞こえるか聞こえないか位の、本当に僅かな音が俺の耳に入り込んできた。
足音の一つがその瞬間止まる。
ヒヤリとした感覚が背筋を走る。
次の瞬間、はっきりと「カチャリ」と音を立て、重めの鉄製のドアの蝶番が擦れる不快な音が「キィー」と鳴る。
―――あの馬鹿!!
足音の一つは確信し、振り向く動作をしている衣擦れの音に変わる。
他の二つの足音も止まり、一つは先の足音と同様に振り向く。
「こっ・・公安警察だ!!」
小池は扉を開けて、すぐさま状況に気付いたらしく、虚勢を張るように声を上げる。
――ったく、馬鹿が
要領の悪い馬鹿のせいで、順番バラバラだよ。
『アメリカ人!!お前の身柄をカクホする!!』
やむを得ず、俺もニューナンブを掲げて飛び出す。