愛染堂市
―――――ペンキ屋



 さて・・・どう出るんだろ?



 仕掛けるか?

 それとも中島が仕掛けてくるのを待つか?

思った以上にコイツはやっかいな中年の様だ。

 何よりも感がいい。

漂う雰囲気は伊達じゃなかったらしい。



 取り合えず・・・うって出るか



 俺が左足に緊張を見せると、中島は俺のそんな僅かな変化にも敏感に反応し、身構えやがった。

しっかりと俺の動きに反応している中島に俺は少し嬉しくなった。

俺は左足の緊張を解かねぇまま、左手に握ったカッターナイフの握りの調子を変える。

中島は案の定、俺のそんな変化にも敏感に反応し、身構えてくれる。



ホント
憎たらしくて面白れぇ野郎だ。


だけど・・・中島さん。

俺の方が一枚上手なんだぜ。



 俺は左足の緊張を軸に一気に中島に詰め寄る。

中島は案の定、備に反応して上体を反らし、憎たらしくも俺のカッターナイフの軌道を完全に読み、最小限の動きで避けようとする。


『中島さん・・・アンタ鈍っちゃいるが一流だよ』


 俺がアンタに致命傷を負わせたいならコレは正解だ。


『だけど中島さん違うんだよねぇ・・・俺はあんたの動きを奪いたい』


俺はカッターナイフを逆手に握り返し、反らした上体に取り残された中島の膝に刃を突き立てる。


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