愛染堂市
 
不安定な体勢で狙いを定める事は困難だったが、9ミリの弾丸は奴の右上腕の外側を確実にえぐった。

奴は銃撃を止め、右手を押さえる。

隙を許す暇も無く、スーツの男は倒れながらも、アメリカ人を乱暴に除けてコチラに向かって発砲する。

俺は瞬間的に通路の角に飛び込む。

奴はオートマチックで三発連続発砲する。

幸いに直接的な被弾は免れたが、奴の放った銃弾が俺のふくらはぎをかすめる。

俺はそのまま通路の壁に背を当て、奴の次の出方を待つ。

運転手は再度撃ち始めたらしく、サイレンサーを通る銃弾の音が数発聞こえる。

―――小池の応戦する音が聞こえない・・・

飛び出せば、待ち受けるスーツの男の恰好の的になる。

――さて、どうする?


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