愛染堂市
 
 呼吸もタイミングも関係無しに、俺はやや慌て気味に飛び出す。

案の定スーツの男は、俺の飛び出すのを待ち構えながら、アメリカ人をエレベーターの中に蹴り入れていた。

俺は通路の反対側に飛び込みながら、奴に向かって一発放つ。

奴も呼応するように撃ち返す。

残念ながら手応えは無い。

俺はそのまま通路の反対側の角に飛び込み、次のタイミングを素早く計る。

一瞬だったが、運転手の姿は無かった。

既にエレベーターに乗り込んでいるんだろう。

「ヌゥ」としたエレベーターのドアの閉まる音がする。

またしても、タイミングも関係無しに飛び出す。

既にドアは閉まっているエレベーターの前まで駆け寄る。

エレベーターが下層へ向かって動き出す振動がドアに伝わる。

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