愛染堂市
足がもつれ絡まり転びそうになるアメリカ人は、スーツの男を酷く苛立たせ、その都度奴は乱暴にアメリカ人の襟首を引き上げる。
そして、しきりに此方に振り返りオートマチックで俺を威嚇する。
俺は一定の距離を保ちつつ、慎重に奴らを追う。
奴はそのまま裏路地を抜け、明治通りに出た。
昼間は何処から湧いて来たのか不思議な程の車が往来するが、深夜の明治通りは、靖国通りからあぶれたタクシーが数台停まっている位なもので、ひっそりとしていた。
奴はそのまま新宿駅方面へ走り出したが、途中アメリカ人が何かを叫びながら奴の手を放れた。
そしてそのまま必死に走り出し、花園神社の明治通り側の入り口に入っていった。
奴は虚を突かれ一瞬呆然としたが、すぐにアメリカ人を追い花園神社に入っていった。
奴らを見る限り、奴らの間に信頼関係は無いか、もしくは既に破錠しているだろう。
奴を出し抜き、アメリカ人を確保する事は容易かも知れない。
俺はこの機を逃す訳にはいかない。