愛染堂市
―――――京子



 バンまで数メートル。

建物の陰から、通りの様子を窺う。

バンから数メートル離れた所に、二人の銃を抱えた復権派のゲリラが、まるで通りを巡回するように歩き回る。

革命軍の残党を捜してるんだろうけど、迂闊に飛び出せば撃たれかねない。

壁に背をピッタリと付けて、口から飛び出してしまいそうな心臓を抑えつけるように、胸に手を置き呼吸を整える。

遠目だけど、子供達がアタシを不安と期待に溢れた目で見ているのが窺える。


――あの子達をここで死なせる訳にはいかない。


アタシは意を決してバンの方へ駆け寄る。

足音に気付いた一人が、アタシに向かって何かを言いながら銃を向ける。

アタシはゲリラを無視して、バンの運転席側のドアに手を掛ける。


『・・・ぐっ・・ウソやだ』


ドアは開いたけど、バンの前方が完全に土壁にハマり、ドアが開ききらない。

虚しく僅か数センチ開いたドアがアタシを一気に絶望させる。


『キャッ!!』


もう一人のゲリラが威嚇の為に、バンの後部ガラスを銃で撃ち割る。

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