愛染堂市
ゲリラ達は、すぐにそのトラックが何かを理解したらしく、お互い顔を見合わせた後、トラックへ向けて二人一斉に撃ち始める。
アタシは真横で鳴る銃の音が、予想以上に大きい事に怯み、その場にペタリと尻餅を着いて耳を両手で塞ぐ。
銃の先から放たれる、音と火花の圧倒的な迫力に、背筋が震え上がる。
あのトラックが来なければ、アタシの頭はあの銃弾を受けていたのだと思うと、全身の血液が凍りついてしまいそうな程に怖ろしかった。
ゲリラ達はトラックに向けて銃を撃ち続けたまま、通りの中央へと横に歩き、コチラに向かって来るトラックの真正面を陣取るような形で少し腰を落とし、銃を肩に構えて撃ち始めた。
トラックは尚もスピードを落とさずに通りを疾走してくるが、ゲリラ達は逃げる素振りも見せずに撃ち続ける。
そしてゲリラ達の数十メートル手前に差し掛かった時に、トラックの窓ガラスの左側が集中的に割れ、トラックは大きく右に曲がり、アタシのへたり込んでいる方向に向かって来た。
――嘘っ?!
アタシはトラックに危険を感じ逃げようとしたが、立ち上がろうにも腰が抜けていたらしく、下半身の力が分散し抜けていくようで立ち上がる事が出来ない。
アタシはそれでも手足の動く部分だけを必死に使い、虫のような格好で、もつれながら後退する。
トラックはそのままブレーキも踏む事無く、さっきの食料品店に突っ込んだバンのケツに追突した。
追突の音と衝撃は凄まじく、その瞬間トラックの前部はバンを抱え込むように凹み、割れたフロントガラスから人が飛び出し、中型のトラックにも関わらず荷台部分のタイヤが地面から数十センチ浮き上がり、追突されたバンは後部をグシャグシャに破壊されながら更に食料品店の奥へと押し込まれた。
浮き上がったトラックの荷台部分は、地面を数度バウンドして、アタシ爪先の数センチ手前で静止する。
アタシは何とか助かったようだが、気を抜くと気を失ってしまうか、オシッコを漏らしそうな程、心臓がバクバクしている。