愛染堂市
―――――傭兵



『――っくっそ!!』


落胆と怒りが同時にこめかみを走り、俺は顔をしわくちゃに悔しがるしかない。

肺を破りそうな程、必死に走って追ったトラックが、目の前でやられちまいやがった。

 しかも俺には、絶望に浸り膝を赤土の上に落とし、嘆き叫ぶ余裕すら許されない。

俺とは違う理由で、同じくトラックを追ってる物騒な連中がすぐに後ろまで来ている。

物騒な連中全員が自動小銃を抱えてるのに対し、俺は二発しか残ってないグロック一丁。


 ――たく、やっかいだ


トラックを撃ち抜きやがった前方のゲリラ二人が、俺の存在に気付いたらしく何やら相談しながら俺に銃口を向ける。

最悪な事に、必死に走って来た俺は通りのド真ん中で突っ立ってるときている。


『撃って下さいって言ってるようなもんだな・・・』


俺は自分の滑稽さに鼻で笑う。


『ちょうど二発か・・』


俺はグロックを握り直し、息を整え、機を待つ。

風が乾いた赤土を埃っぽく舞上げ、ザラザラと肌にこすりつける。

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