愛染堂市
 
 遠目に奴らが自動小銃の銃床を、二の腕で支えるような動作が見えた。


――来る


俺の体が即座に反応し、右手のグロックの銃口は前方のゲリラに向けられ、左手を右手の上に添えた時には、既にフロントサイトが左側のゲリラの頭部と重なっている。

そして俺はその瞬間にトリガーを引く。

閃光の様に視界を一瞬白く染めるマズルファイアの後、左側のゲリラの頭部は着弾の衝撃で後方に揺れ、間も無く膝を赤土に落とす。

右側のゲリラは何が起こったのか気付けないまま、俺に向かって銃撃を開始する。


『・・・ケッ素人が』


力んで抱えられた銃口から放たれる銃弾は、俺の2メートル程手前の地面を叩き、赤土混じりの砂煙を上げる。


『にわか仕込みのカラシニコフじゃ、玩具と同じなんだよ』


俺は素人ゲリラに言い聞かせるように呟き、冷静に残ったゲリラの頭部を撃ち抜く。

そして奴が膝を落とすのを確認し、路肩に突っ込んだトラックに走り寄る。


――クライアントと仲間は期待出来ないが、トラックにはゲリラとの応戦に足りうる売りモンの武器が積んである筈だ。
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