愛染堂市
「ほら来やがった。テメエがもたついていやがるからだ・・・」
バイクの男は奴にそう言い放つと、右手を腰の後ろへと回す。
俺はその動作に反応し、右手に握られたニューナンブを構えようとしたが、即座に体が反応しなかった。
バイクの男は、腰の後ろから月明かりに一際映える様なギラギラのスチールの銃を取り出す。
『・・ゃ・・やめろぉっ』
精一杯の声を振り絞って、右手のニューナンブを持ち上げバイクの男に向けて構えようとするが、声も右手も限界を既に越えていた。
『・・よ・・よせぇ』
バイクの男は取り出した銃をアメリカ人に向け、「コイツは無理だ」と吐き捨てる様に言い放ち、胸部に二発撃ち込んだ。
『・・くっそ!!』
そしてバイクの男は奴に顎で合図する様に促し、奴はアメリカ人が抱えていたリュックを取り上げ、バイクの後ろにまたがる。
奴がバイクの後ろに着座したのを確認すると、バイクの男は右手のギラギラとした銃口を今度は俺の鼻先へ向ける。
「邪魔しやがって」
「中島さんっ!!」
バイクの男がその引き金を引こうとした瞬間に、小池が叫びながらバイクの男の腕に飛びかかり、肘で銃を殴り落とす。
「・・くっそ!!テメエ!!」
バイクの男は銃を叩き落とされた事に、慌てた様に声を荒げ、掴み掛かる小池を左拳で殴り弾き飛ばす。
俺は小池の作ってくれた好機に応える為に、歯を食いしばりながらニューナンブを持つ右手を上げる。
そして何とか目線の高さまで銃を突き上げる。