愛染堂市
「・・たくっ・・厄日だな」
バイクの男は、俺の向けた銃口にそう言い放つと、アクセルを吹かしバイクの後輪を激しくスピンさせ、その場で煙を巻き上げながら旋回させる。
そして、その動作に俺が怯んだ瞬間に明治通り側の出口に向け急発進する。
「待てっ!!」
弾き飛ばされた小池が起き上がり様に叫ぶが、バイクの男と奴は瞬く間に石鳥居の向こうへと走り去る。
「中島さん!!」
『追うな、小池。無理だ、かなわない。』
俺はため息の様に小池を制止し、重い膝を抱えてゆっくりと立ち上がる。
「中島さん・・大丈夫ですか?」
『大丈夫じゃねえよ・・お前こそ大丈夫なのかよ?』
「・・肩が死ぬほど痛いです」
小池は苦笑いしながら、血が滲んでグショグショになった肩をさすり答える。
『銃創は残るぞ・・新婦さんもさぞお怒りになるだろうな』
俺も小池に苦笑いで返すように言い放つ。
「中島さん・・笑えないですよ」
小池がいつもの困ったような顔を見せた瞬間、「うぅ」と唸るような声が耳に入る。