愛染堂市
『オイ小池、生きてるぞ!!』
小池は俺と見合わすように頷き、俺達は声の主のアメリカ人に詰め寄る。
『小池!!携帯は?!』
「あります!!」
『救急車だ!!警察経由で緊急手配しろ!!』
「はい!!」
小池が手配をかける間、アメリカ人の銃創を探し、止血箇所を探る。
「うぅ・・ドラシ・・ル」
俺がアメリカ人の上着のファスナーを下げようとすると、アメリカ人は上着の胸ポケットを軽く叩きながら何かを呟いた。
『何?なんだって?!』
「ユ・・ユグドラシ・・ル」
俺はアメリカ人が叩いていた胸ポケットに手を入れる。
指先に硬質の薄型の物体を感じる。
『コレか?』
俺はそれを取り出し、アメリカ人の目の前にかざす。
「・・ユ・ュ・ユグドラシル」
アメリカ人はその物体を虚ろな目のまま確認すると、先程と同じ言葉を呪文のように吐き出し、三度目に「ユグ」と言ったかと思うとそのまま絶命した。
「中島さん、間もなく来ます」
『あぁ・・だが間に合わんようだ・・』
「・・死んだんですか?」
『あぁ』
「なんですソレ?手に持ってるの?・・・ん?MD・・MDですか?」
『あぁ・・ユグドなんとからしい』
「ユグドなんとか?!なんですソレ?」
『さぁな・・・俺にも解らん』