愛染堂市
 男はアタシの2メートル程前から銃を構えて近付いてくる。

 真っ直ぐにアタシの目を見てて、アタシは念力でもかけられているみたいに身動きが取れなくなる。



「オイ女!!気の毒だが・・・・ん?お前左腕どうした?・・・まぁいいや気の毒だけど、俺と一緒に来てもらおうか?」



 男はニヤついた顔でアタシに顎の前まで銃を持ってきて言った。

 アタシは呼吸の仕方を忘れてしまった様に息が詰まり、ひゃっくりの様に小刻みに喉を振るわせるしか出来ない。



「なぁ・・?」



 男はアタシの顎に銃口を突き付ける。

冷たい鉄の感触がアタシの顎に伝わってる。

アタシは2日も何も食べていないのに強い吐き気をもよおす。



「――ちょっとだけでいいから、俺に付き合ってくれねぇか?アンタを殺す気は無ぇからさ・・・」



 男はそう言って優しい顔をして軽くウインクしてきた。

 なぜかアタシは男の人懐っこい表情に緊張が緩んだ。

 そして何となく男は本当にアタシを殺す気が無いという気持ちさえ起こった。


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