愛染堂市
装填してある弾倉を外し残弾を確認するが、一発も無駄なく撃ったとしても、ゲリラ共全員を片付けるには明らかに弾数が足りない。
―――溜め息も出ねえや
走り去ったトラックに目をやると、路地裏を50メートル程バックした所で停まっていた。
『あん?何してんだアイツ?』
トラックの停めたバカオンナは割れた運転席から身を乗り出し、建物の陰に大声で叫んでいた。
『マジかよ?・・・この期に及んで・・スクールバスじゃねえんだぞ』
建物の陰からは、俺の煙草とライターを盗んだクソガキと、他の薄汚いガキ共が出てきて、トラックの荷台の方へ向かった。
『―――ッツ!!』
俺がトラックに気を取られている隙に、数人のゲリラ共が近付いていたらしく、相変わらずの下手くそ射撃で、俺の身を隠した建物の土壁を弾いていた。
『くっそ!!どいつもコイツも!!』
俺は外して確認していた弾倉を戻し、近付いて来る足音に耳を澄まし、その人数と方向に予測を付け、低く身を乗り出し、壁際まで近付いていたゲリラ三人を手際良く捌く。
『カラシニコフはこうやって撃つんだよ!!』
独り言でしか無い軽口を叩くと、裏路地の先からクラクションが聞こえ、俺はトラックの方へ目をやる。
他に居ないとは思ったが、クラクションを鳴らしているのはバカオンナだった。
『ん?何?』
バカオンナはクラクションを鳴らしながらコチラに何かを叫んでいるようだったが、本当に馬鹿らしく、クラクションの音で全てかき消された。
『・・・アイツ本物だな』
バカオンナが何を叫んでいたのかは聞こえなかったが、何がしたいのかは理解した。
バカオンナは散々クラクションを鳴らした次の瞬間、今度はアクセルを全開でコチラに向かって前進して来た。