愛染堂市
トラックはアクセル全開で、50メートル程の狭い裏路地を全力疾走で走り抜けてくる。
「乗ってぇっ!!」
激しく砂煙を舞い上げるトラックのエンジン音に紛れて、バカオンナの一際デカい声が耳に混じって入ってくる。
『乗れ?!オイオイ飛び乗れってかよ?!』
トラックはバカオンナの言葉とは裏腹に、停まろうと減速する気配は見られず、乗せる気があるのかすらを疑いたくなる程に加速を続ける。
それはむしろ、乗せると言うよりも、ひき殺すつもりとしか思えない程だった。
『クソ!!バカオンナ本気かよ!!』
俺は突っ込んで来るトラックを一旦左に避け、荷台のゲートを掴みそのまま飛び乗ろうとするが、スピードが出ているトラックに上手くタイミングを取る事が出来ず、間抜けに引きずられ走りになる。
そしてそのまま走りながら次のタイミングをはかる羽目になる。
『ああん?何言ってんのかわかんねぇよ!!』
荷台の中から、さっきのガキ共が俺に向かって何か言っている。
察するに「頑張れ」とか「早く」とか言ってるんだろうが、コイツらの言葉は解らねえし、この状況で聞く耳を持つ気もない。
―――むしろ放って置いてほしいってのが本音だ。
『オッ!!オオオオォォーッ!!』
タイミングを合わせ、いざ荷台に飛び乗ろうとした時に、トラックが大通りに達し、右に急旋回する。
俺は遠心力に逆らえないまま、馬の尻尾のようにトラックのケツで大きく振られる。