愛染堂市
俺は荷台の中で、手近な自動小銃を手に取り、チラチラと仕切りに視線を配るガキの肩を叩いて合図する。
ガキは俺の合図で、俺の体勢が整ったのを確認すると、射撃を止め満面の笑みで俺の顔を覗き込んできた。
『ん?何だ?褒めてほしいのか?・・・悪いが後にしろ』
俺はウザったいガキの笑顔を荷台の奥に追いやり、なおもトラックを追い続けて来るゲリラ共数人をリズム良く片付ける。
トラックは追い続けるゲリラ共を引き離しながら、街の東側の出口へと向かう。
俺は威嚇程度の射撃を止め、詰まれた手榴弾の木箱に持たれ掛かる。
『ふぅ・・何とかなったか』
大きく息を吐き出し、砂塵に霞むゲリラ共に軽く手を振り、ポケットの中から煙草を取り出す。
『ん?・・ナンダ?』
クソガキが暑苦しい笑顔で俺を見詰める。
「ア・・アドル!!アドル!!」
ガキは自分と俺を交互に指差し、しきりに話し掛けてくる。
『ああ、わかったわかった!!アドルな?ウザってぇから奥に行ってろ!!』
俺はガキの頭を乱暴に撫で、そのままもう一度奥へと追いやる。
そうこうしている間に、トラックは街の東のはずれへと到達し、無事に街を出る。
砂煙に霞む街並みから、所々黒煙も上がる。
俺は煙草に火を点け、大きく吸い込み、大きく吐き出す。
煙草の味と砂の混じった乾いた空気が口の中に広がった。