愛染堂市
 
「半年前に田所のトコにガサ入ったろ?」


『入ったろ?も何も、入ったのは木村さんアンタだろ?田所のオジキはアンタのお陰でまだ食らってるんだから・・・』


「まぁ、そん時の応酬品なんだがな・・・」


ウエイトレスが丁寧におしぼりとお冷やを持ってきて、木村の前に差し出す。

木村はウエイトレスが来ると話を止め、「ありがとさん、俺にもコーヒーくれるかな?」と言って、早々にウエイトレスを追いやる。


「田所、銃が好きだったろ?」


『好きだったも何も、銃刀法で引っ張ったんでしょ?』


「そうなんだよ。ロシアやらアメリカやら色んな銃が出てきたんだけどな・・・」


木村はいけ好かない笑顔で、白々しく言葉を吐く。

木村の白々しい言葉と笑顔に一々腹が立つ。

田所のオジキが木村にしょっ引かれたのは、木村に上納金を納める事を拒んだからだ。

白々と言葉を重ねるこの悪徳警官は、見せしめに田所のオジキをしょっ引きやがった。


『そりゃ色々出るでしょうよ、田所のオジキはそれがシノギだったんですから』


「まあまあヤマモト、そう怖い顔せずに俺の話を聞いてくれねぇか?」


木村は俺の声色を察し、へつら笑いを浮かべ嫌味な甘い声を出す。

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