愛染堂市
ウエイトレスが眠そうな顔して、カチカチとコーヒーをトレイの上で鳴らしながら、俺と木村のテーブルに持ってくる。
「お待たせいたしました~」
「おぉ、サンキュサンキュ、お姉ちゃんも大変だねぇ・・・こんな夜中まで」
木村の言葉にウエイトレスは苦笑いを浮かべながら、ペコリと申し訳程度の会釈をして、そそくさと戻っていく。
『―――木村さん、で・・・用件は何なんですか?』
「お、おお、そうだな」
木村はテーブルシュガーをサラサラと必要以上にコーヒーに入れ、乱暴にかき回しながらムカつく顔を上げる。
「田所んトコで押収した銃の中で・・・ド派手なスミス&ウェッソンの銃があってな・・・」
『派手?』
「ああ、派手も派手!磨き上げたスチールがギラギラの40口径のコルトなんだけどな」
『・・・それがどうかしたのかよ?』
木村は勿体ぶるようにズビリとコーヒーをすすり、周りを少し見回した後、ムカつく顔を俺に近付けた。
「さっきの歌舞伎町の事件で出て来ちまったんだよ・・・」
『ハァ?!』
「一課に居る知り合いが連絡くれたんだがな・・・」
『それって、つまり田所のオジキから押収した銃が出てきたって事か?』
俺の言葉に木村はコーヒーをすすりながら頷く。