愛染堂市
不意に助手席のドアが開き、アタシはビクリと体を強ばらせる。
ドアを開けたのはバカオトコだった。
バカオトコはアタシが言葉を投げかけるのを制止するように一睨みした後、助手席の彼に視線を落とし顔を近付け、英語で「辛いか?」と彼の耳元に囁いた。
彼は視線をバカオトコに向け、何かに安心したように、聞き取りにくい英語で「疲れた」と呟いた。
バカオトコは彼の言葉に頷き、彼を助手席から引っ張り出そうとした。
『ちょ・・ちょと何やってんのアンタ?!』
アタシはバカオトコを止めようと、彼の上着の裾に手を掛ける。
「バカ!!離せ!!」
『離せないわよ!!アンタ何すんのよ!!』
「聞こえたろ!?・・・コイツが何望んでんのか」
バカオトコの言葉にアタシは言葉を失い、反射的に裾を掴む手を離してしまう。
バカオトコは手を離し言葉を無くしたアタシに、「馬鹿が」と一言放ち、彼を助手席から引きずり出す。
『・・・馬鹿って』
アタシはバカオトコの言葉を反芻し、数秒ほど放心したが、すぐに間違っていると思い、開け放たれた助手席のドアから這い出る。
『っいつっ!!』
勢いあまり落ちるように外に出ると、バカオトコは彼を路上に寝せ、見下ろすように銃を構えていた。