愛染堂市
『ちょっと!!ホント何してんのよアンタ?!』
バカオトコはアタシの言葉に反応し、一瞬アタシに視線を向けたが、すぐに彼に視線を戻した。
彼は仰向けに目を閉じたまま、先ほどまでと違い深い呼吸をしている。
その頂点からは傾きかけてはいるけど、なおも衰えすら見せない太陽が、アタシ達を容赦無く照らす。
なのにバカオトコは、俯き加減で汗すら浮かべず、視線の先の彼を捉えたまま、呼吸や瞬きすら忘れているのではないかと思う程に静かに佇んでいた。
『・・・撃つ気?』
「ああ」
『どうして?』
「どうして?・・・わかるだろ?」
バカオトコは視線を彼から外さず、また呆れ口調で答える。
『ちょっと待って・・・助けられないの?・・・街まで戻れば』
自分自身ですら無理なんだと理解している事を言葉にしながら、バカオトコの腕を縋るように掴み、銃口を彼から避けようとしたが、軽く振り払われ、アタシはその場で尻餅をつく。
「・・・気がひけるなら見えない所に行ってろ」
バカオトコの言葉にアタシは返す言葉を失う。
道徳的な事や宗教的な事をアタシは口走りそうになり、バカオトコが言うソレが真意なのだと思え、言葉を唾気と共に飲み込む。