愛染堂市
―――――中島



「ここじゃ無理です!!早く病院へ!!」


 救急隊に担架の上で銃創を診せ、応急処置だけで事を済まそうとする小池に、救急隊は半ばキレ気味に諭す。


『・・・素直に病院に行けよ馬鹿』


救急車のステップに腰掛けながら、救急車の中の小池と救急隊のやり取りに多少うんざりして、俺も救急隊に加勢する。


「中島さんも撃たれてるじゃないですか?!」


『こんなモン撃たれた内に入らねえよ』


到着した所轄や本庁の捜査課の奴らの仕事を横目に見ながら、小池の言葉を一蹴する。


「・・・でも顔はボコボコじゃないですか?」


小池はふてくされたガキみたいに言葉を吐き捨てる。


『はんっ、違いねぇや・・・だが肩を撃ち抜かれたのとは訳が違うな』


 俺はジャケットの内ポケットを探りながら、途中で煙草が無くなっていた事に気付く。


『なぁ・・煙草無いか?』


「はぁっ?!」


俺の横を慌ただしく行き来する若い警官の一人を呼び止め、煙草を求めるが、怪訝な表情と不信感たっぷりの返事で通り去って行く。


『チッキショウ、一本くらい良いだろうに・・・』


「中島さん、彼らは勤務中ですよ。・・・それに今は煙草を吸う警官は少ないですし・・・」


『ふんっ・・何とも肩身の狭い話だな』

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