愛染堂市
「正直言ってどうだったかな・・・御代志会の下位組織だってのは知ってたんだが、何やってるのか?までは調べついてなかったしな」
『そうなのか?』
「ああ・・・半年位前までは業界新聞の発行やら、街頭にビラ貼ったりと、まともな左翼団体の活動はしてたんだがな・・・」
毒島は自分も煙草を一本抜き取り、再度ジャケットから金のデュポンを取り出し、火を点け、煙を吐き出しながら中空を見上げ話す。
『最近は違ってたのか?』
「最近は学生やらを集めて・・・オイオイ?!最近って、お前らの方が詳しいんじゃないのかよ?!何の為にガサ入ったんだよ?!」
『俺達も実は左翼団体だって位の概要しか理解してねえんだよ。・・・あくまでも今回はアイツのガラを確保する事が目的だったんでな』
俺は運ばれようとしている、シーツに被われたアメリカ人を、顎でしゃくりあげながら言った。
「アイツは一体何モンなんだ?」
毒島は怪訝な表情を隠さずにシーツを見詰め呟く。
『さあな、不法入国のハッカーだ。・・・それ以上は俺も正直わからん』
毒島は俺の言葉に、納得してないのを丸出しな顔で「ふうん」と言い、深く煙草の煙を吐き出した。