愛染堂市
「―――公安・・・外事の中島さんはアンタかい?」
俺と毒島の会話に割って入る声に、振り向くと、俺と年齢の変わらなそうな、如何にも刑事と言った堅い感じの男が怪訝な表情を浮かべ突っ立っていた。
『・・・ああ、俺が外事の中島だ』
「俺は捜査一課の木村だ。アンタに聴きたい事がある」
俺が木村の言葉に反応し、お決まりの文句を口ずさもうとすると、木村は片手を挙げ「ああ、勿論答えられる範囲で良い」と言って手鼻を挫き「アンタらの事だ機密事項だらけだろうから」とイヤミに言葉を重ねた。
俺は内心で舌打ちしながら『手早く頼むよ』と言葉を返した。
「仏さんの身元は?」
木村の質問に、パッと出てこない横文字に苦戦していると、救急車の中から小池が「マイルズ・ザサー。アメリカ国籍」と俺の代わりに答えた。
「何モンだ?」と木村は言葉を返し、小池が「ハッカー」と言い「多分」と付け足した。
木村は腑に落ちない顔で、救急車に運び込まれるアメリカ人を眺め、「アンタがやったのかい?」とボソリと吐き捨てるように聞いてきた。
『脚を撃ったのは俺だ』
木村はただ頷いて、境内を見回しながら「もっと地味にやってくれよ」と独り言のように言い、「相手の目処は付いてるのかい?」と俺に視線を戻して言った。