愛染堂市
『・・・そんなサラブレットが何で現場に居る?』
俺は毒島の言葉に別に負け惜しみを言うつもりは無いが、純粋に湧いた疑問を聞いてみる。
――どう足掻いても負け惜しみにしか聞こえないだろうが・・・
「・・・そこなんだよ」
毒島は歯の奥に挟まった物が有るかのような物言いで、俺からわざとらしく顔を背ける。
シャクだが、このまま負け惜しみのまま終わるのも更にシャクなので毒島に付き合う。
『問題でも有る奴なのか?』
「アイツにゃ何の問題も無いがな・・・」
『じゃあ何で?』
「兄貴だよ、兄貴。・・・木村には同じ本庁の生活安全部に兄貴が居るんだがな」
『兄貴?』
毒島は俺の社交辞令の食い付きに意気揚々と話し始める。
「ああ・・・ソイツがとんでも無い食わせモンらしく、監察が動いてるって話だ。それに何度かウチのヤマにも名前が挙がってるくらいだしな」
『公安四課で名前が挙がるって事はヤクザ絡み・・・癒着か?』
「癒着なら可愛い話だろうが。噂じゃ、ヤクザ相手のユスりタカり、上前まで跳ねてるって話だ」
救急車の中で俺達の話を横聞きしていた小池が「けしからんですね」と言い、俺はそんな小池に『お前はさっさと病院に行け』と睨み付け言葉を掛ける。