愛染堂市
『後ろに積んでるのって死体?』
アタシは欲を掻いて、更に男に突っ込んでみた。
それが正しい判断だとは思わなかったけど、このまま黙って助手席に乗って居られる程アタシの心臓は強靭じゃない。
「聞いてどうする?」
『別に・・・ただ・・・』
男が真剣な表情を見せたので、アタシは少し怖くなって、また体を緊張と寒気が包んだ。
男は黙ったまま暫く車を走らせた。
アタシはホントは殺されるかもしれない。
男の表情がアタシを不安にさせる。
調子に乗ってあんな事聞くんじゃなかった。
アタシは後悔で泣き出してしまいそうだった。
大体、普段から客に使う様なトークを殺し屋らしい男に使う事が間違っていた。
この男は普段アタシを買うようなチンピラやヤクザとは明らかに違うのに。
「お前・・・腹減ってんのか?」
『え?』
「さっきからずっと腹鳴ってる」
アタシは緊張のあまり自分のお腹が鳴っている事に気付かなかった。