愛染堂市
―――――傭兵



『いつまでも気に病んでるんじゃねえよ!!』


 頭を撃ち抜いた仲間の遺体を路肩に引きずり、申し訳程度の弔いにタバコを添える俺を、相変わらず放心状態で眺めるバカオンナに苛立ち混じりの声を掛ける。


「あ・・・うん」


バカオンナは俺の言葉に気の抜けた返事をする。


『あっうんじゃねえよ!!バカオンナ!!わかってんのかよ!?』


「あ・・・うん」


 バカオンナの気の抜けた返事は、暑さと焦りで苛立つ俺を益々苛立たせる。


『いいかバカオンナ、人間ってもんは遅かれ早かれ死ぬんだよ。人間だけじゃねえ、生き物ってもんは死ぬんだよ。わかってんのかよ偽善者が!!』


「・・・偽善?別に偽善じゃないわよ!!」


バカオンナは俺の言葉に憤慨したらしく、ややムキになりながら否定する。


『偽善なんだよ、お前も知っての通り此処は紛争地帯だ、つまり戦場なんだよ。死人は腐る程居る。むしろ実際にその辺に腐って転がってる。コイツだって、そんな死体の一体になったにすぎないんだよ』


「・・・そんな、仲間なんでしょ!?」


『仲間だったのは確かだが、仕事での関係でしかないんだよ。それ以上に何か特別に感傷に浸る理由はねえよ』


俺は胸のポケットから煙草を取り出しジッポで火を点け、煙を浅く吸い込む、砂埃でまみれた口内に煙が染みる。

バカオンナは言葉を失い、ただ俯いていた。

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