愛染堂市
『・・・撃ちなさいよ』
情けない言葉を呑み込み、次に出てきた勇ましい言葉に自分でも驚いた。
「何?」
バカオトコは聞き取れなかったと言うよりも、理解出来なかったと言う感じに首を傾げ、間抜けな顔でアタシに聞き返す。
『撃ってみなさいよ!!』
「・・・撃たないと思っているのか?」
『撃つか撃たないかは関係ない。アタシは自分の気持ちに誇りを持ちたい!!』
「ハアッ!?何言ってんだオマエ?」
『アンタが偽善だって言う事も、ここが紛争地帯だって言う事も・・・アタシが今、感じて間違っていると思う事の理由にはならない。アンタがどんだけの死に対面してようと、その全てが一過性の出来事であったとしても、今アタシの目の前で起きた事をアタシが間違いだと思う以上は、銃を突き付けられても気持ちを偽る事はしない』
バカオトコは間抜けに口を開き、首を傾げながら突き付けていた銃を一旦降ろし、「オマエ、本当に何を言ってるんだ?」と実に不思議そうにアタシの顔を覗き込む。
アタシもバカオトコの言葉に不意に冷静になり、本当に何を言っているんだろう?と気恥ずかしく思えたが、アタシの口を吐いて出た言葉を今更引っ込める訳にもいかず、ただ真っ直ぐにバカオトコの目を見返す。
「仕方ねえな・・・自分が馬鹿だったと、あの世で悔やめ」
バカオトコはそう言って、下ろした銃をもう一度アタシのオデコに突き付けた。