愛染堂市
道を覆うように伸びた木々の枝が乾いた風でざわめき、照りつける太陽で汗塗れになったアタシの体を僅かに冷やす。
そんな心地良い風とは裏腹に、オデコに突き付けられた銃の冷ややかな感覚は現実味を帯びない異質な感じがした。
その冷たい銃口に、アタシは静かに目を閉じ覚悟を決める。
「――キョーコ!!」
銃に意識を持っていかれそうになったアタシをアドルの声が呼び戻す。
「――チッ、ガキのくせに」
バカオトコが舌打ちをし、アタシのオデコから銃口を離す。
アタシは反射的に目を開き、バカオトコを見る。
バカオトコの銃口はアタシじゃなく、アタシの後方へと向いていて、アタシは慌てて銃口の先へと目をやる。
バカオトコの銃口の先には、身長と大差ないライフル銃を構えたアドルが、真剣な目つきでバカオトコにその銃口を向けていた。
「オイ、ガキにカラシニコフを捨てるように言え」
バカオトコがアドルを見据えたままアタシに言う。
『カ・・カラシニコフ?』
「銃だよ!!あのガキの持ってるライフル!!カラシニコフ・・・AK47!!」
『あっ・・ああ、じゅっ銃ね』
アタシはアドルに『ダメ』と伝えると、アドルは真剣な眼差しのまま首を振り、「ヤダ」と返してきた。