愛染堂市
「お前はニュースを観てないのかよ!?」
俺の言葉に木村が呆れたように言う。
俺はムカつく木村の言葉は無視し、見出しの記事を読み始める。
「国土交通大臣の大出光三は知ってるか?」
木村は記事を読み始めた俺を邪魔するように声を掛ける。
『ああ、名前ぐらいはな』
「ソイツに今、献金の疑いが掛かってんのは知ってるか?」
『そうなのか?』
「やっぱりニュース観てねえな?事務所のテレビで何観てんだよ?って言うかテレビ観てるか?毎日やってるだろ」
『生憎とウチの若いモンは教養が薄くてな…テレビはもっぱら野球かバカ番組しか映ってねえよ』
俺は木村の言葉にムカつきつつも、情けない自分の組を嘆く事しか出来なかった。
「…だろうな。まっとにかく、その大出の周辺で今は地検の特捜部が慌ただしく動いてるんだよ」
『…話が読めねえな。それがどう火種になるって言うんだよ?』
「呆れたな…オメエは自分の組の内情も理解してねえのかよ?」
『ハア!?どう言う事だよ!?』
「ったく、どっから説明したもんかな」
木村は呆れたように言葉を吐き捨て、空になったコーヒーカップを高く掲げながらウェイトレスを呼んだ。