愛染堂市
 
「あそこか?」


捜査員が激しく出入りする部屋の前を指差し毒島が俺に聞き、俺は息を整えながら無言で頷く。

 毒島は捜査員の間を縫い、部屋の中を覗き見るように首を伸ばす。

中を覗いた毒島は苦い顔をしながら「うわ、ひでえな」と言葉を吐いた。

毒島の後に続いて捜査員の間を縫いながら、毒島と同じように部屋の中へ首を伸ばす。

部屋から漏れる血の生臭みでその惨状を想像していたが、それを軽く上回る程酷い現状に言葉を失う。

部屋の中は、一見すると普通の会計事務所か何かのように事務用のデスクが並び、それぞれのデスクの上には大きめの高そうなパソコンが置いてある。

そしてそれぞれのデスクには二十代かそこらの若い男達が頭を撃ち抜かれて座っていた。


「何人だ?…イチ、ニィ、サン…」


毒島が頭を撃ち抜かれた仏さんを指差しながら数える。


『なあ…毒島?』


六人目まで数えた毒島を制し、俺が言葉を掛けると毒島は察したように「妙だな」と言葉を返す。

俺が疑問に思った事と毒島が思った事の合点がいったらしく、毒島は仏さん達に近付き仏さん達を一人一人確認し始める。

俺は入り口の近くの壁に背中を預けながら、そんな毒島を見守るように待つ。

一課の捜査員や鑑識達が、そんな俺達を邪魔そうに横目で眺めていた。


「コイツら、堅気だな」


確認し終わり俺の前に歩みよりながら、毒島がボソリと呟く。

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