愛染堂市
 
 広い倉庫の中は所狭しと車が並び、奥で数人の男がそれぞれに作業している。


「・・・車屋・・なの?」


『車屋だろ?』


 街外れの倉庫に所狭しと、ここに並ぶ車を見回すと確かに異様だ。

山中に乗り捨てて有りそうな、軽トラックから国産の4WD、しまいにゃベンツやBMまで並ぶ。


「・・・この車って」


『大体は盗難車だろうなぁ』


「・・・やっぱり」


 女は並んだ車をマジマジと眺めながら狭い車の間を必死に抜け、俺の後を付いて来る。

 俺は黙々と作業をしている人間の間を抜けながら、奥の簡単な仕切り板で仕切られた事務室へ向かう。


「ペンキ屋が女連れとは・・・珍しい事もあるもんだなぁ」


事務室で帳簿を眺めていた初老の男は帳簿から目を話さずに呟いた。


『・・そんな日もあるだろ』


「・・・車か?」


 察しの良い、この初老の男は『車屋』それ以外の呼び名を俺は知らない。

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