愛染堂市
 
「―――なぁアンタ、ペンキ屋って言うんだろ?」


 車が用意されている入り口へ向かうアタシ達に、金髪の感じの悪い若い男が、話し掛けてきた。

 ペンキ屋は無表情に男の方を向き、無言のまま頷く事も無く歩みを止めた。


「やっぱりそうか?なっアンタペンキ屋なんだろ?」


 男がそう言うと、ペンキ屋はまた前を向き入り口に向けて歩き出した。

 ペンキ屋の態度に明らかにムッとした態度の、金髪の男の前をアタシが通り過ぎようとした時、男はアタシの右腕を掴んで強く引いた。


「―――あれぇ~!お前アサガオだよなぁ?キューティーの?」


 男はそう言ってアタシの前に顔を寄せる。

そしてニヤリとしながら半笑いでペンキ屋の方を向く。


「ペンキ屋ぁ~噂は本当だったんだなぁ?」


ペンキ屋は無言のまま、此方に首だけを向ける。


「お前ペンキ屋とは・・・もうヤったのか?」


『ハアっ?!何よアンタ?!・・・ちょっとはなしてよっ!!』


「ヤれる訳無えよなぁ~」


男はそう言って、また気持ちの悪いニヤケ顔をする。


「ペンキ屋ぁ~っ!おフェラのアサガオちゃんでも駄目だったかぁ?このインポ野郎!!」


 男はアタシの右手を強く掴んだまま、ペンキ屋に向かって吠えた。

 ペンキ屋は表情を変えないまま、此方に首だけを向けている。



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