愛染堂市
―――――中島



『・・・こいつだ』


 俺は雑居ビルの部屋を、一部屋一部屋丁寧に見回り、三階の一番奥の部屋で確信する。


「中島さん・・・アンタホントに大丈夫かい?顔が真っ青だぜ・・・」


『木村さんよ・・・見てみろよコレ』


 ヨレヨレの俺を心配してか、それとも面倒な事を終わりにしたいのか判らないが、声を掛けて来た木村に、俺は壁を指差して見せる。

俺の指差した壁には、花火のように真っ赤な血痕が飛び散っていた。

花火のようと言う例えは、相応しくないのかも知れねえが、放射状に飛び散った血は、放物線を描くように垂れ落ち、本当に花火のようにしか見えなかった。


「・・・中島さん・・・満足か?」


『あぁ・・・悪いが鑑識を呼び寄せてくれ』


「あぁ・・・ただ中島さん」


『なんだ?』


「もうここまでにしておいた方がいい」


『あぁ・・・分かってる。鑑識が来たらすぐに病院に戻るよ』


「・・・そうじゃねぇ」


 木村は、今までと違う真剣な表情を見せて、血痕の付いている壁の前まで歩み寄り言った。


「コイツはプロだ」


 木村のわかりきった発言に、俺は『知っている』と言ったが、木村は表情を変えぬまま、黙って首を振り、床と壁の接地面を擦りながら、言葉を重ねた。

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