愛染堂市
「なぁ・・・どうするんだい?これから?」
脂汗をタラタラと流しながら廃ビルから出て来た俺は、ミニパトの運転席側に座りエンジンを掛けようとした。
木村はそんな俺に慌てて駆け寄り言葉を吐いた。
『キューティーに行く』
「無茶言うな、病院に戻れよ限界だろ?」
『アンタにゃ迷惑掛けねえよ』
「もぉ・・・わかったよ!!俺がキューティーに行ってくるからアンタは病院に戻れ!!」
『気が変わったのか?』
「今日だけだよ」
木村はそう言って俺を助手席の方へ促した。
俺は痛む体を持ち上げ助手席側へ詰めた。
俺は確信していた。
今俺の中にあるのは悔しさだ。
そして後悔しかしていないと言っていた木村の中に宿るものも悔しさだ。
後悔だけじゃない。
それはさっき階段で見上げた時に、木村の目の中に脈々と生きているのが見えた。
「中島さんよ」
木村はミニパトのエンジンを掛けながら言葉を吐いた。
「・・・ペンキ屋はどんな顔をしてやがった?」
『・・・ニヤけた顔だったよ』
俺がそう言うと木村は「そうかい」と一言吐いて車を走らせ出した。
もう日が高い所まで来ていて、少しばかり蒸し暑く感じる街並みを眺めながら、俺は少しばかり疲れて狭いシートに身を沈め、ゆっくりと目を閉じた。