愛染堂市
―――――ヤマモト


「・・・ヤマモトさん?」


『んあ?』


「聞いてました?江島さんと連絡が着かないらしいです」


『・・・そうか、しかし何だぁ?!さっきからちっとも進んでねえじゃねえか』


「・・・検問だそうで、若いモンから先程連絡がありました」


『検問?・・・何だって検問なんか』


「さぁ・・・そこまでは、あっちょっと待って下さい」


 そう言って助手席に乗る檜山は、俺のとの会話を中断し「お疲れ様です」と言いながら、携帯に出た。

俺は少し面白くなくなり『なぁ何で検問なんだぁ?』と言いながら、ガチガチに緊張しながら運転している、名前も覚えてねえ若いモンの後頭部を、後部座席から身を乗り出してこついた。

更に面白くねえ事に、名前も覚えちゃいねえ若いモンは、間抜けに「さぁ」と繰り返すだけで、俺の期待するような応えは返ってこなかった。


「―――警官が刺されたらしいです」


 檜山は携帯を切るなり、運転席と助手席の間からコチラを覗き込むように言った。


『・・・そうか。なぁ檜山?』


「なんです?」


『隣のミニパトに乗ってんの・・・ありゃあ木村だよな?』


俺は隣で、同じように渋滞に捕まるミニパトを指差し、檜山に問い掛ける。

檜山は視線を一度車外にやり、再度俺の方を向き「ええ生安の木村ですね」と言って、また前を向き直した。


『おい!!若いの窓開けろ!!』


「あっはい!!」


若いモンが慌てて、ドアの操作ボタンを押す。


『馬鹿!!運転席の窓開けてどうんすんだ!?俺だ!!俺の横だ!!』


「あっはい!!スイマセン!!」


『・・・ったく』


俺は呆れて殴る気にもなれなかったが、檜山が平手でパチンと若いモンの頭を叩いた。

ゆっくりと濃いめのスモークの貼ってある窓ガラスが開く。

よく見ると、木村の向こう側にもう一人乗っているのが見えた。


あまり見ねえ面だ。



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