愛染堂市

『アサガオ・・・・本気だぞ』


「あっ!やっとアサガオって呼んでくれたね」


俺の迂闊な言葉に女は笑顔で応える。


「―――ペンキ屋、何故撃たないの?」


『お前は死にたいのか?』


「・・・フフフ、よっぽどのノイローゼでも無い限り死にたい人間なんて居ると思う?」


『お前はいったい何がしたい?!』


俺は苛立ちから声を荒げる。


「知ってるでしょペンキ屋?・・・アタシ馬鹿なの!!・・・自分でも何がしたいのか、よく分かってないの。・・・でもね、さっきも言ったように今まで退屈で死にそうだったの」


女はそう言いながら、グロックの銃口を右手の指先で押さえながらゆっくりと下げる。

そして自分の左胸のあたりに銃口をつけた。


『どうしたい?』


「・・・わからない、でも不思議とあなたに撃たれるなら・・・いいかもって思ったの」


女はそう言いながら一度グロックに目をやり、まるで銃の質感を確かめるように右手でグロックを二、三度さすった。

そしてそのまま延長線上のグロックを握る俺の右手首を握った。

俺は一瞬反射的に体が強張る。


「ただねペンキ屋」


女はそう言って視線を上げて俺の目を見る。

俺の体の強張りは緊張へと変わる。


「撃つ時は、ちゃんとアタシを見て!!・・・ううん違う!!ちゃんとアナタの目をアタシに見せて・・・お願い」


俺はグロックを握る右手に汗を感じる。

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