愛染堂市
【ッターーーーッン】
俺は女の手を振り払い、グロックを天井に向け一発放つ。
広い構内の中で銃声は共鳴し、色の無い空間に強い光が放たれたような錯覚を覚える。
やがてその響きは止み、コロコロと静かな音を立てながら薬莢が女の足元に転がる。
『次は望み通りにお前の心臓に撃ち込んでやる。ナメたマネはやめろ、何のつもりだか知らんが、お前に情けを掛けるつもりは無い』
「情け?・・・そうだよね情けを求めるのが普通なんだよね?」
女は銃声に怯える事もうろたえる事も無く、ただただ俺の目を見つめたまま言葉を吐く。
「・・・だけど、お願い最後までアナタを見せて」
女は俺の顎先に右の指先を伸ばし、キスを求めるような顔で俺の顔を自分に向ける。
「・・・さぁ撃って」
『何のつもりだ?・・・色仕掛けか?』
「あら、そう見える?」
『・・・さあな』
女は俺の顎先に手を添えたまま、ゆっくりと顔を寄せてくる。
俺は壁を背にし銃口を頭に突き付けられたように動けなくなる。
女が顔を寄せると共に、必然的に女の胸突き立てられたグロックが押され、女の胸の弾力が冷たい銃身を通して伝わってくる。
頭の後ろの方に生暖かい感覚がぼんやりと蘇える。
一瞬視界を失いかけてしまう。
的を絞るように意識の線を鋭く研ぎ澄まし視界を取り戻す。
俺が視界を取り戻した時、目を閉じた女の顔はすっかりと俺の目の前に来ていた。
女の寄せる唇を、まるで処女のように震えながら受け止める。