愛染堂市
アタシは唇を絡ませながら、ペンキ屋のカットソーを右手で捲り上げる。
ペンキ屋の胸を露にし、ペンキ屋の胸の中央に僅かに生えた産毛のような胸毛を指先で摩りながら、ペンキ屋の無駄の無い両胸の筋肉の中央に、可愛らしく付いている乳首に舌を這わす。
ペンキ屋の体が僅かに強張ったのを舌先に感じる。
アタシは喜びと悦びで、体の奥から溢れ出る液体で全身を湿らせてしまいそうな、熱い錯覚に取り囲まれる。
こんなにも男の体を欲した事があったかな?
無い、こんなにも素直に誰かを求めた事は無い。
男を何度も体に受け入れ、自分の意思とは裏腹に膣内を守る為だけに、ローションのように溢れる愛液を感じた事はあっても、心から溢れる湧き水のような愛液をアタシが感じた事は今までに無い。
お願いペンキ屋、アタシを感じて、アタシの溢れ出る気持ちを感じて。
「無理だろ?」
アタシの祈りを遮るような、ペンキ屋の言葉が無機質な室内に静かに響く。
『・・・どうしてインポになったの?』
「・・・言ったろ?そこまで答える気はねえよ」
アタシはペンキ屋の体を、指先で擦りながらペンキ屋の瞳を覗き込み『ごめん』と呟く。
指先に僅かな凹凸を感じる。
アタシはその凹凸に目を向ける、ペンキ屋の左腹部のあたりだった。
『・・・どうしたのコレ?』
「昔の傷だ」
アタシが、ペンキ屋の肌に凹凸をつける、ケロイド状の部分を擦りながら聞くと、ペンキ屋は静かに呟いた。