愛染堂市
 
アタシはペンキ屋の、瞼に半分を隠されたグリーン瞳の奥の「何か」に手を入れて引っ張り出したいと言う、強い欲求に駆られる。


『ペンキ屋、貴方の心の・・・』


「やめろっ!!」


『・・・失った部分を』


「やめろっ!!やめろっ!!」


『アタシが補ってあげる・・・』


ペンキ屋はアタシの言葉に、首を激しく横に振りながら、何度も「やめろ」と強く言葉を重ね、拳銃を持つ手を震わせる。




『ペンキ屋・・・アタシが貴方の心になってあげる』




「言うなぁーーーーっ!!」



 ペンキ屋がアタシに向ける銃口の先から強い、閃光が一瞬閃く。

 その閃光を理解する間も無く、大きな音が部屋に響き渡る。


 一発の銃声が部屋を支配する。







< 89 / 229 >

この作品をシェア

pagetop