愛染堂市
「―――クライアントが揉めてる」
仲間が溜め息混じりに、スコットランド訛りが抜けない英語で、俺の横に腰掛けながら呟く。
「バドか?珍しいな」
仲間が俺の右手のボトルに気付き、少し驚いたように言う。
『コイツらからしたら、ペプシもコークも変わらねえんだろうよ・・・』
俺が諦めたように言うと、仲間は横目でバーテンの方を見て「ビアが通じただけでもラッキーだ」と言った。
仲間はバーテンに向かって「バド」と言う。
俺は、ハイネケンが出て来ないか期待したが、白い歯の黒人は、注文通りバドワイザーを出した。
俺は舌打ちをし、仲間は俺の肩を楽しそうに叩いた。