愛染堂市
 
 残念ながら、あの奇抜なカラーリングのボトルは無いようだ。

俺は、もう一度バドワイザーを頼もうと思ったが、二度も妥協する事に少しばかりの苛立ちを覚え、違う物を頼む事にした。

まっ仕事に差し障りが無いようにって、ちょっとした言い訳もあるが。


『コーラ』


コークと言って、ペプシが出てきたら、無駄に綺麗に並んでいる黒人の前歯を折りかねないので、俺はコーラとだけ言った。

黒人は、また何度か頷き後ろの冷蔵庫からボトルを取り出し、プシュリと少し気の抜けた音で栓を抜き、俺の前へ置いた。

テーブルの上に置かれたボトルは、明らかにコークを意識したデザインだったが、コークのそれとは違い、俺を戸惑わせた。

ナッツの味を思い出しながら、恐る恐るボトルに口を付ける。


『・・・意外にイケる』

コークに似たボトルの黒い液体は、少々炭酸が弱いが、俺の口には意外と合った。


< 99 / 229 >

この作品をシェア

pagetop