あなたしかいらない
そんなことを思っていたら、隼人くんは私に聞いてきた。
「俺、記憶喪失になってた時、なんか陽芽にした?」
「え…」
ふと、頭の中で蘇るキスシーン。
途端に、私は顔が真っ赤になった。
「え!?俺なんかした!?」
私の異変に気が付いた隼人くんは、自分が何かしたと思ったようだった。
「あ…ちっ違うよ
何もなかったよ」
「本当に?」
隼人くんの言葉に私は頷いた。
そしたら、隼人くんは「よかった」と言いながら私を抱き締めた。
トクン、トクンと響き渡る私と隼人くんの心臓の音が、とても心地よかった。
そして、さっきまでとは違う、懐かしいような隼人くんの腕に、記憶を取り戻したんだという実感が滲み出てきた。
やっと、もとに戻れたんだ───。