あなたしかいらない
「…陽芽、ちょっとこっちこい。」
私は、いきなり千里兄に病室の外に連れていかれた。
「グスッ……何…?千…里にい……ヒック…」
千里兄は私のほうを真剣な、……でも悲しげな感じで見てきた。
「お前、あの高島隼人っつー男に惚れただろ?」
「……うん。」
「今とは言わない。あいつを忘れろ。」
───は?
何言ってるの?
千里兄…
「陽芽には婚約者がいんだろ。」
「……知ってたんだ…。」
「あぁ。……お前さぁ、婚約解消したい……婚約解消するって思ってんじゃん?」
「なんで言ってないのにわかるの?」
「顔に出てるから。陽芽は思ったことがすぐ顔に出るからな。」
「……」
『顔に出てる(笑)』